先日、従業員が仕事中にケガをした。今回は休まずに済んだが、休業が必要なケースもあることから、業務災害が発生し、従業員が休業したときの待期期間の考え方について社労士に確認することにした。
先日、従業員が仕事中にケガをしました。幸いにも休業が必要となるようなものではなく、従業員は通常勤務をしています。
それは良かったです。安心しました。
業務中にケガをしないように安全対策をしていますが、それでも休業が発生したときの対応について、事前の知識として教えてください。労災保険の休業補償給付は、休んだ日から数えて4日目から支給されると聞きましたが、最初の3日間はどのようにすればよいのでしょうか?
そもそも休業補償の必要性は労働基準法に規定されており、労働基準法では休業の1日目から会社が休業補償を行うことが義務となっています。そのため、労災保険では支給されない3日間(待期期間)は会社で休業補償をする必要があります。補償額は、休業1日につき平均賃金の6割です。
なるほど。では、その3日間はどのように数えるのでしょうか?
3日間の数え方については、業務災害が発生した時刻によって異なります。まとめると以下のようになります。
(1)所定労働時間中に業務災害が発生し、そのまま病院へ行った場合
業務災害発生日を含め3日間が待期期間となる
(2)所定労働時間に業務災害が発生したが終業時刻まで1日勤務し、所定労働時間後に病院へ行った場合
業務災害発生日の翌日から3日間が待期期間となる
(3)所定労働時間後の残業中に業務災害が発生し、病院へ行った場合
業務災害発生日の翌日から3日間が待期期間となる
業務災害の発生時刻と、病院へ行った時刻で取扱いが異なるのですね。今回は所定労働時間内に業務災害が発生しました。それが先週金曜日の午前中で、そのまま病院に行っています。
それであれば、金曜日を1日目として数えます。さらに待期期間3日間は会社の所定休日に関係なく、暦で数えるため、土曜日・日曜日が所定休日であっても、金曜日、土曜日、日曜日の3日間が待期期間になります。
金曜日は病院に行くほどの状態ではなかったものの、その後、ケガの症状が悪化し、月曜日に病院に行き、医師から休むよう指示が出た場合は、どのようになるのでしょうか?
この場合は、病院にかかった月曜日から数えることになります。
土曜日・日曜日に療養していたとしても、この休日は数えないということですね。
はい、そうです。医師から休むよう指示が出ていないため、この土曜日・日曜日の2日間は待期期間の3日間に含まれません。
なるほど、医師の指示もポイントになりますね。ところで、会社が休業補償を行うべき日に、従業員本人が年次有給休暇を取得したいと言ってきた場合、取得を認めても問題ないのでしょうか?
はい、問題ありません。会社が勝手に年次有給休暇を取得させることはできませんが、本人が年次有給休暇の取得を希望しているのであれば、問題ありません。今回は仮定のお話でしたが、もしもの際はすぐに相談頂ければと思います。
そうします。
今回は、業務災害により休業補償給付の支給を受ける場合の待期期間の考え方をとり上げましたが、健康保険の傷病手当金の支給を受ける場合の待期期間との違いを補足します。
労災保険における休業補償給付における3日間は連続している必要はなく、例えば休業していた日の翌日に何らかの理由で出勤せざるを得なかったとしても、出勤した日を除き3日間を待期期間としてカウントすることができます。一方、健康保険の傷病手当金にも3日間の待期期間がありますが、こちらは3日間が連続している必要があります。労災保険の休業補償給付と取り扱いが異なることを押さえておきましょう。
■参考リンク
厚生労働省「労働災害が発生したとき」
※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。
- 通勤手当の支給額や労災保険の適用に関する考え方2025/06/12
- 改めて確認したい無期転換申込権の発生と特例の取扱い2025/05/08
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